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2009年3月22日 (日)

「広島の講演会」でのお話 No. 3

標準治療の説明をなさった秀先生のあと、私のプレゼンの番が回ってきました。

数日前からの悪性の風邪で、私の声はかなりかすれ、時々咳が止まらなくなるていたらくでしたが、聴衆にステロイドを使う先生が多いことを想定して、かなり論理武装したプレゼンを用意していました。そのため、内容もかなり薬剤に関連したことに絞って行いました。内容は、「アトピー患者 1000人の証言」を執筆した下地となった「成人アトピーのアンケート調査」を中心にまとめたものです。

内容的には、下の通りです。
*私自身の病歴
*何故この調査に着手したのか
*どういった人たちが調査対象となったのか(私の調査では、ステロイドがうまくいかなかった人が多い母集団となりました)
*発病はいつか、アトピー歴はどのくらいか
*何年くらいステロイドを使ったのか
*ステロイドを止めた経験はあるのか、あるならば、その理由は何か?
*ステロイドを止めたときのリバウンドはどうだったか
*リバウンドの強さと使用年数には関係があるのか(これはクロス分析しました)
*プロトピックの使用状況
*病院での辛かった経験
*自分のアトピーが悪化した理由
*自分のアトピーが緩解した理由  などなどなど。。。

あまりステロイド忌避に偏るプレゼンにはしたくなかったので、「ステロイドでうまくいく人がたくさんいるのは理解しています。しかし、ある割合でうまくいかない人が存在し、その人達が非常に苦しい思いをしており、医療の場から見放されている人も少なくないのです。」といった感じで話をまとめました。

普段のプレゼンではあまり感情を出さない自分ですが、「病院での辛かった経験」の項では、それをまとめたときの辛さを思い出して、思わず涙声になってしまいました。
「医師の言うことに異議を唱えたら、『だから治らないんだ!』と怒鳴られ、カルテを目の前で破られた。しかし、しっかり治療費は請求され、とても悲しかった」といった体験談もありました。(もっともっとたくさんひどい例があるんだが。)
私が、本の中で、患者さんの体験談をまとめたのはちょうど4月5月のあたりでした。私のアトピーがもっともひどく、ちょうど4月から新しい職場に通い始め、何もかもが初めての経験で、ひどくプレッシャーがかかっていた時期でもありました。同時進行で、帰宅後自宅で執筆をしていたのですが、これが本当に辛い作業でした。あまりにも患者さんがひどい目に遭っているのです。いくらなんでもそりゃないだろ、みたいなことを言われ(お医者さんて、やっぱり患者を馬鹿だと思ってる?)、ステロイドをいやだというと、無理矢理処置室に連れて行かれて注射されたり、薬を塗られたり、、。そんな経験が、アンケート調査をめくってもめくっても山のように出てきたのです。それを一つずつ、電子ファイルに打ち込んでいったわけですが、やっているだけでこちらまで泣けて泣けて仕方ありませんでした。そのことを思い起こすと、プレゼンの最中に思わぬことに涙が溢れ、一瞬言葉が続きませんでした。

私は、秀先生がトップバッターというからには、聴衆の多くがステロイドに対して疑問をあまり持っていないお医者さんが多いものと思っていました。ところが、実際は数日前の新聞報道のせいで(ではなくおかげで)、おそらく150名からの聴衆のうち100名くらいが患者さんかその関係者でした。
そして、お医者さんの多くも、東洋医学関連(つまり漢方のお医者さん)が多く、かなり好意的な感触を受けました。私はどちらかというと、相当聴衆にたたかれることを想定していたので、安心のあまり足の力が抜けるような気がしました。といっても、厳しい質疑もあったのですが、司会者の先生も助け船を出してくださり、終わってホッと安堵したのでした。
しかし、それよりも私がはっとさせられたのは、司会者の先生が秀先生にコメントを求められたときでした。(すごく途中ですが、次に続きます。)

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2009年3月15日 (日)

「広島の講演会」でのお話 No. 2

前回、続き物にしたくせに、全然続きが書けずにすみません。職場の法は少し楽になるかと思ったら、意外にも雑用の嵐が!しかも、私はどうも要領が悪くて、どうしてこんなに少しの仕事に時間がかかるのかなあ?という状況でした。なれれば大丈夫、と言う同僚の方達の言葉を信じて、毎日やりくりしています。

ところで、「広島の講演会」の話の続きですが、この講演会では、標準治療をなさる秀先生が「アトピー性皮膚炎診療ガイドラインの要諦と実践」というタイトルでお話ししました。まさに、「アトピーガイドライン」と私たちが「ちょっとこれでいいんかい?」と首をかしげたりするもののポリシーを説明なさったわけですが、私は不思議と先生の講演にあまり違和感を感じなかったのです。「ステロイド、ホントに大丈夫か?」と思っている私が、ガイドラインの説明をなさる先生の講演に対し違和感を感じなかったということは、私にとってはそっちのほうが違和感で、「何で私は違和感を感じないのだろうか?」ととても頭をひねってしまったのでした。

そして、後から考えたことですが、秀先生が
*リバウンドの存在をはっきり認めていたこと
*最終的には薬剤を使用しない状況にまで持ってくることを治療の目標としていること
*ステロイドをいやがる患者にはステロイドを処方しない方針であること
これらのことが大きかったように思いました。

アトピー患者がステロイドに拒否感を持つ大きな理由の一つはリバウンドだと思うのですが、このリバウンド、医療現場では非常に過小評価されているように感じていたのです。それが認められていることに、私はいくばくかの希望を感じました。
また、「アトピーは治らないから、ステロイドで一生コントロールすべき」とおっしゃる先生方が多いので、「ステロイドの副作用は、一生塗っていても避けられるの?どんどん副作用が増幅しないの?」という疑問が沸々と湧いてしまっていたわけですが、秀先生は、「アトピーに薬を塗らなくても良いところまで持って行くのが最終目標」とおっしゃられたわけで、それはそれなりに理解できることでした。
このような先生の講演から、私は、標準治療を掲げる先生方の中にも、かなりの温度差があるのだと言うことを感じたわけです。

問題は、「止められなくなっちゃっている患者はどうしたらいいのか?」という根源的な問題は解決できないのですが、、。

ここまで考えたとき、ふと思ったのですが、「ステロイドの副作用を強く受け、ステロイドから足抜けできなくなってしまっている患者」は、おそらくは標準治療にとっても、脱ステ治療にとっても、非常に手強い相手であり、要するに今のところ決定打はない、ということなのだと思うのです。それを、今回の会の主催者である室本先生は、「医原生のアトピーには、ステ派も、非ステ派も決定打を持っていない。だから両派がいがみあう原因になっていて、患者がその谷間に落ちている」とおっしゃっていました。私もまさにそれに近いのではないか、と思っています。

医療は患者のためにあるわけですから、患者がどこの谷間だろうが、落ちてはならないはずです。この問題を解決するには、やはり、違う意見を持つもの同士、違う立場のもの同士が、協力し合うしかないのではないか、というのが今の私のスタンスです。

そのためには、少なくとも一部の患者が落ち込んでいる状況について、標準治療側の先生方にも理解していただかないとなりません。標準値両側の先生達がおっしゃるような「ステロイドバッシングの時代は過ぎ、医療の混乱は終息した」では片付かない事実があるわけです。そこで(と計画したのは私ではありませんが、)秀先生の次に私が「成人多とピー患者の抱える困難について〜アンケート調査から見えてくるもの」というタイトルでお話しさせていただきました。
(次回に続く。なるべく間、あけないようにします。)

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